施政方針について
昨年は、8,400人を超えるランナーがエントリーした「第21回果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン大会」や5年ぶりの開催となった「さくらんぼ種飛ばしワールドグランプリ」など、四季折々のイベントが盛大に実施され、まちがさらに賑わった年になりました。
その一方、市民の日々の暮らしに目を向けると、全国的な賃上げの動きはあるものの、物価高騰の影響などにより、市民生活や地域経済を取り巻く環境は、依然として厳しい状況が続いております。
市では、独自の支援策として、中学校給食費の無償化や、小中学校入学時の5万円給付を今年度から開始するなど、子育て世帯を中心とした経済的負担の軽減に取り組んでまいりました。新年度においても、住民に身近な基礎自治体として、国の重点支援地方交付金を活用した商品券事業の実施など、生活者と働く者の視点に立った対策を講じてまいります。
近年、地球温暖化が原因とされる異常気象による災害が頻発しており、本市でも、毎年のように記録的な猛暑や大雨といった異常気象が発生しております。市民の安全・安心を守り、生活を支えるため、引き続き、災害への備えを万全にするための取り組みを推し進めてまいります。
また、昨年は高温の影響により、さくらんぼの双子果や障害果がこれまでにない規模で発生し、大凶作となりました。本市が誇る生産量日本一のさくらんぼの温暖化対策が急務であります。関係機関と連携した技術の普及とともに、資機材導入への市独自の補助などを実施し、温暖化に対応した強固な産地形成を図ります。
地球温暖化の問題は、地球規模の深刻かつ重大な危機であり、今後も私たちの生活にさまざまな影響や変化が生じることが懸念されます。「豊かな環境のまち」を未来につなげるため、市民・事業者・行政が一体となって、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速してまいります。
わが国は、「静かな有事」とも言われる少子化と人口減少という大きな課題にも直面しております。
厚生労働省の発表によると、平成30年から令和4年までの5年間の市町村別の合計特殊出生率は、県内では本市が最高の「1・63」となりました。これまでの先駆的かつ充実したこども・子育て支援の取り組みが実を結んでいることが実証されたことになります。しかしながら、いまだ人口を維持するための「2・07」を下回っている状況にあり、少子化傾向の改善には至っておりません。そのため、安心してこどもを産み育てられ、未来にわたり希望が持てる東根市であり続けられるよう、こども・子育て支援をさらに推し進めていく必要があります。
新年度は、妊娠初期からの伴走型相談支援として、新たに24時間対応のオンライン相談を開始するなど、より安心した出産・育児環境を整備するための施策を展開してまいります。
少子高齢化が進行する中で、こども・子育て支援の充実とともに、医療と介護の充実が求められております。これらは、住民が住み続けたいと感じる最も重要な要素であり、そのためには、北村山公立病院の役割が欠かせません。
北村山公立病院については、医師の確保とともに、老朽化した施設の建て替えに必要な財源の確保が大きな課題になっており、国や県に対し、その支援を強く要望しているところであります。
こうした中で、先般、国の「都市構造再編集中支援事業」において、連携する事業の1自治体あたりの補助対象事業費の上限が、12億円から21億円に引き上げられるとの朗報が届きました。国の予算成立前ではございますが、要望活動の一つの成果と捉えております。
また、同じく重要課題として、市民の健康の保持増進を図るため、旧神町小学校の跡地への検診センターの誘致についても粘り強く取り組んでまいりました。その結果、昨年末に、「やまがた健康推進機構」において、事業の方針が決定されるなど、大きな進展が見られているところであります。
新年度においても、これらを着実に前進させるべく不退転の覚悟をもってあたり、近い将来の実現に必ずつなげてまいります。
このほかにも、重要課題である国道48号のバイパス化をはじめとして、本市が取り組まなければならない課題は山積しております。いずれも乗り越えるのは決して容易なことではありませんが、私の持てる力を総動員して、立ち向かってまいる所存であります。
第5次東根市総合計画に掲げた、「豊かな環境 みんなが選ぶ 住みよいまち」を具現化するため、「誠実、公正、実行」の政治信条を胸に、全力を傾注してまいります。
令和7年度当初予算
次に、令和7年度予算案の大綱について申し上げます。
国の令和7年度予算案につきましては、115兆5,415億円と過去最大の規模となり、賃上げと投資がけん引する成長型経済へ移行するための予算とされております。
地方財政計画では、人件費の増加、物価高が見込まれる中、地方の行政サービスの安定供給やデジタル活用推進などの重要課題への財源確保のため、地方譲与税および地方税は前年度比6.5%の増、地方交付税は前年度比1.6%の増となりました。また、地方交付税の財源不足を補う臨時財政対策債は、制度創設以来初めて新規発行の予算額がゼロとなり、一般財源総額は、前年度比1.7%増の63兆7,714億円とされたところであります。
これらを踏まえた本市の令和7年度の財政見通しは、歳入では増加を見込む一方で、歳出では経常的な経費の増大などにより、厳しい財政運営が見込まれます。
令和7年度予算案は、こうした中にあっても本市が将来にわたって発展し、飛躍し続けることができるよう、堅実に積み立ててきた基金を積極的に活用し、編成いたしました。
歳入に関しましては、地方交付税の大幅増のほか各種交付金等の伸び、また、近年の実績に鑑み、ふるさと納税による寄附金も増額を見込んでおります。
市税収入は、賃上げに伴う個人所得の増加を見込み、個人市民税は増額計上しました。また、企業収益が持ち直していることから、法人市民税は微増を見込んでおります。このほか、近年増え続けている新規分譲等における住宅の着工件数や、企業による設備投資の増加により、固定資産税は大幅な増額を見込んでおります。
歳出に関しましては、人事院勧告を反映して人件費が大幅に増加したほか、建築資材等の原材料費やエネルギー、各種サービスの価格も軒並み上昇していることから、経常的な運営経費が増大しております。こうした中にあっても、市民の安全・安心な生活を守るために必要不可欠な行政サービスを確保したうえで、第5次東根市総合計画に掲げたまちづくりを着実に進めることができるよう、各種施策に取り組むための経費を計上しております。
この結果、令和7年度の一般会計予算案は、過去最高額となる285億5,900万円となったところであります。また、一般会計並びに特別会計、企業会計を含めた予算総額は、435億3,407万1千円となったところであります。
それでは、新年度の主な施策について、第5次東根市総合計画に掲げた体系に沿って、ご説明いたします。
みんな元気にいきいき暮らす 健やかで住みよいまち
子育て環境の充実
子育て世帯の経済的負担を軽減するため、入学するこども1人あたり5万円を支給する小中学校入学応援事業を引き続き計上するとともに、新年度は、県事業と連携し、保育料の負担を軽減する対象者の範囲を拡大する経費を計上しております。
また、オンラインにより24時間相談できる出産・子育て応援事業、新たに1か月児および5歳児健診を実施する乳幼児健康診査事業のほか、ひとり親家庭支援事業などを拡充して計上しております。
幼児教育・保育施設に関しては、新年度から、民間1施設が小規模保育事業に移行する予定であり、これに加え、令和8年度の開所を予定する民間2施設の認可保育施設整備も予定されており、これらに伴う負担金および整備補助金を計上しております。これらにより、保育の受け皿の確保が一層図られるものと考えております。
高齢者福祉の充実
団塊の世代が75歳以上となるいわゆる2025年問題に対応するため、「老人福祉計画及び第9期介護保険事業計画」に基づき、介護ニーズの変化を踏まえ、高齢者が安心して健やかに暮らし続けるための各種事業を実施してまいります。
障がい福祉の充実
本市はこれまで、医療的ケア児への保育サービスの提供をはじめとして、障がい児等の健やかな成長を積極的に支援してまいりました。
新年度から、人工呼吸器などを使用している障がい児・障がい者に対し、非常用電源の機器の購入補助を実施してまいります。また、障がい児保育を行う保育所等への補助制度を創設するなど、その支援を拡充してまいります。
健康づくりの充実
健康寿命の延伸のためには、生活習慣病の予防や疾病の早期発見・早期治療が重要であります。このため、新年度から、健康推進事業として、新たに骨粗しょう症検診を実施してまいります。また、高齢者予防接種事業において、令和7年4月から定期接種となることが決定した高齢者の帯状疱疹予防接種の助成に係る経費を計上しております。
自然と環境を未来につなぐ 安全・安心で快適なまち
防災機能の強化と強靭なまちづくりの推進
本市はこれまで、令和2年7月豪雨を教訓とした西部防災センターの建設など、防災機能の強化に努めてまいりました。新年度は、洪水ハザードマップを更新するとともに、内水被害からも確実な避難行動を促すため、新たに内水ハザードマップを作成いたします。また、これらの周知徹底に努め、防災意識の高揚を図ってまいります。
消防機能の強化
消防指令業務共同運用事業において整備しておりました新たな消防指令センターは、新年度から本格運用を開始いたします。災害に対する広域的な連携、自治体間の相互応援体制をより強固にし、市民の安全・安心に資するものと考えております。
また、山形連携中枢都市圏の連携事業として、消防機関と医療機関が、救急事案情報や傷病者情報をリアルタイムで共有することができるシステムの導入経費を計上しております。これにより、現場の救急隊と複数の医療機関で情報共有ができ、受入可能な医療機関を早期に確認できるようになるなど、医療提供体制の充実を図ってまいります。
環境保全の推進
本市は、令和2年1月に県内自治体で初めてゼロカーボンシティを宣言いたしました。新年度は、脱炭素化に向けた取り組みを一層進めるため、宅配ボックスの設置に対する補助制度を創設することとし、地球温暖化対策事業において、関連経費を計上しております。
都市基盤の整備
将来的な人口構成の変化や人口減少も見据えた、持続可能なまちづくりに取り組むため、第2次東根市都市計画マスタープランに基づき、都市計画総務事業において、用途地域の見直しに係る必要経費を計上しております。
また、災害に備えた強靭な都市基盤の整備も、早急の対策が求められております。上下水道事業において、老朽管の更新や雨水幹線の整備費等を引き続き計上しております。
力強く魅力いっぱいの 産業と交流のまち
農林業の振興
冒頭に申し上げたとおり、昨年のさくらんぼは、高温の影響により大凶作となりました。このため、佐藤錦生産環境整備事業において、高温障害対策経費、杉板等の巣材購入経費を追加するなど、補助メニューを拡充し計上しております。
また、有害鳥獣農作物被害防止対策事業において、有害鳥獣の捕獲に係る補助制度および猟友会の後継者育成に係る支援を拡充して計上しております。
商工業の振興
本市には工業団地を中心に多様な企業が立地しており、地域経済のけん引役として重要な役割を担っております。新年度は、工業用水道を受水している企業からの受水量増量要請に応え、より一層の工業振興を図るため、工業用水道事業において、送水能力の高いポンプへの更新に係る経費を計上しております。
観光の振興
本市の四季折々の賑わいを創出する各種イベントについては、新年度もより一層の充実を図ってまいります。特に第22回果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン大会は、募集人員を第21回大会より2,000人増の10,000人とし、熱中症予防対策などにも万全を期しながら開催してまいります。
ひがしねブランドの発信
市ではこれまで、本市の高品質な農水産物の生産、加工、流通・販売を融合させ、高付加価値化を図るため、6次産業化の推進に取り組んでまいりました。新年度は、民間企業の専門知識やノウハウを活かし、地域資源のさらなる掘り起こしや地場産品・サービスの開発、商品の販路拡大を行うため、総務省の地域活性化起業人制度を活用することとし、果樹王国ひがしね6次産業化推進事業において、関連経費を新たに計上しております。
心豊かな人を育てる 教育と文化のまち
幼児教育・学校教育の充実
学校のICT環境については、児童生徒1人1台配備のタブレット端末の更新時期を迎えます。より高性能の端末を導入するとともに、令和5年度に整備した電子黒板の効果的な活用とあわせ、一人ひとりの学びの充実につなげてまいります。
また、今年度に引き続き、中学校の学校給食費無償化事業に取り組み、子育て世帯の経済的負担の軽減に努めてまいります。
生涯学習の充実
社会教育施設長寿命化改良事業において、令和6・7年度で実施している、小田島公民館の長寿命化に係る工事費を引き続き計上しております。
スポーツの振興
新年度は、市民体育館の長寿命化に着手することとし、社会体育施設長寿命化改良事業において、その実施設計に係る経費を新たに計上しております。
市民みんなの力でつくる 笑顔輝く協働のまち
移住・定住の促進
現在、地域おこし協力隊制度を活用し、2名の隊員を任用しておりますが、農業の担い手を確保するとともに移住・定住の促進を図るため、新年度はさらなる増員を見込み、関連経費を計上しております。
また、定住促進事業を引き続き実施し、本市への移住および定住を促進してまいります。
計画推進のために
大けやき行政の推進
令和7年度は、第5次総合計画・前期基本計画の終期を迎えることから、今後5年間の行政運営の指針となる後期基本計画の策定に向け、関連経費を計上しております。基本構想に掲げたまちづくりの目標の達成に向けて、市民各層からの声を反映しながら、策定してまいります。
また、計画推進のためには、行政事務を円滑に運営するための人材確保が必要不可欠であります。しかしながら、近年、少子高齢化や民間企業の採用力の高まり等により、自治体の職員採用は年々困難となっており、本市も例外ではありません。そのため、採用情報の積極的な発信や採用管理システムを利用し、有為な人材の採用を促進するべく、関連経費を計上しております。
「情報システムの標準化・共通化」については、本稼働に向けた計画に基づき、情報管理事業において、移行に係る経費を引き続き計上しております。円滑な移行に向けて、適切に進めてまいります。
これまで申し上げてまいりました各種施策を持続的に展開していくためには、安定した強固な財政基盤を確立させることが必要不可欠であります。
本市財政を取り巻く状況は、依然として厳しいものがありますが、最大限の財源確保に努めるとともに、真に必要な分野に重点的に配分し、効率的な執行を徹底してまいります。
今や本市は、県内で最も勢いのあるまちと評され、多くの人々から選ばれるまちとなりました。しかしながら、本市を取り巻く環境は、目まぐるしく変化しており、また市民ニーズも多様化かつ複雑化しております。
こうした中にあっても、私は、市政を預かる者として、これまで同様、確固たる信念と覚悟を持って、東根市をさらなる高みに導くため、まちづくりに全身全霊を捧げてまいる所存であります。
議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、令和7年度の施政方針といたします。